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お箸は昔、柳の枝をふたつに折り曲げたピンセットのような形が最初です。この古来のピンセット型のお箸は、今も奈良の正倉院で見ることができます。
古事記にも、お箸の記述があります。箸は口に運ぶ先は人のもの、もう片方の端は神様のものとして考えられていました。そのような考えから、食事の時にお箸には神様が降りてくると考えられていました。
中国では、三千年前から使われていたと言われています。お箸は中国から渡って来たとされていますが、実際は人間が火を使うようになって、熱いものを持つのに手で持つのは熱いですから、木の枝などをお箸のように利用したのが最初だと考えるのが自然ではないでしょうか。そして、今日のような日本食とともに使いやすいお箸になったのです。
どんなお箸が使いやすいのでしょうか?「使いやすいお箸はどれですか?」とご来店くださるお客様から、よくご質問を頂戴します。お箸の選び方には、いくつかの目安があります。
一つ目は「長さ」。利き手の親指と人差し指で直角に矢印を作り、人差し指と親指の間の長さを一咫(ひとあた)といいます。この長さの1.5倍が適当な長さの目安となります。しかし、箸の長さの好き好きには個人差がありますので、あくまでも目安です。
二つ目は「太さ」。細いお箸から太いお箸まで、いろいろな太さがあります。一般的には、持ち手の部分が適度な太さがあるほうが持ちやすいと思います。
三つ目は「箸先の形」。箸先にもいろいろな形があります。丸、四角、五角、八角、乾漆仕上げ、溝があるものなど。麺類やヌルヌルした食べ物などは、箸先に角があったり、滑り止めになっているものの方が使いやすくなります。
四つ目は「塗り箸と木箸」塗り箸とは、漆をていねいに塗り重ねているので、表面がツルツルしています。このため、食べ物が滑るとお考えになる方もいらっしゃいますが、堅牢な塗りなため丈夫であるとともに、表面に汚れがつきにくく、常に清潔感のあるお箸をお使いいただけると思います。また、木箸とは、木のぬくもりを残し、拭き漆や蜜蝋で仕上げたものをいいます。木箸は、木のザラザラとした感触を残しているため、塗り箸に比べ滑りにくいという利点があります。しかし、何回も使っていくうちに風化するのが早く、だんだん木が白くなってきてしまうのが欠点です。
五つ目は「重さ」。人それぞれにお好みの重さがあります。軽いお箸の好きな方、少し重さがあった方が好きとおしゃられるかた。重さも好みが別れる重要なポイントです。
六つ目は「しなり」。折れない程度で、適度なしなりがあるお箸は、さらに使いやすくなります。特に竹箸などは、しなりの効果で、思っている以上に食べ物をキュッとつかむことができます。
七つ目は「デザイン」。お箸のデザインにもいろいろなデザインのものがあります。お好みのデザインのものをお選びください。お箸は、毎日使うものですので、どうしても傷んでいってしまうものです。毎日、同じお箸を使うのも良いですが、二、三膳お持ちになっていただき、お料理やその日の気分でローテーションさせると、お箸も休むことができて長持ちしますし、食生活にちょっとした潤いになると思います。天然素材の素敵なマイ箸をみなさんに見つけていただきたいと思います。
お箸の作法にも、いろいろな禁じ手があります。
| 刺し箸 | お箸を食べ物に突き刺して食べること。 |
|---|---|
| 箸渡し | お箸ではさみあげた食べ物をお箸とお箸でやり取りをすること。 |
| ねぶり箸 | お箸についたものを口でなめること。 |
| 持ち箸 | お箸を持っている手で一緒に他の食器を持つこと。 |
| 涙箸 | お箸の先から汁をぽたぽた落とすこと。 |
| 叩き箸 | お箸同士を太鼓のばちのようにかんかんと叩くこと。 |
| かき箸 | 食器のふちに口を当てて、料理をかき込んで食べること。 |
| 立て箸 | ご飯の上にお箸を突き刺すことは仏箸と言われ、死者の枕元に供えるときだけです。 |
| 空箸 | お箸を一度料理につけておきながら食べないでお箸を置いてしまうこと。 |
| 受け箸 | お箸を持ったままおかわりをすること。 |
| 込み箸 | 口に入れた食べ物をさらにお箸で口の奥へ押し込むこと。 |
| 振り箸 | 箸先に着いた食べ物などを振り落とすこと。 |
| 移り箸 | あれこれと卑しくおかずばかり続けて食べること。 |
| こじ箸 | 食器に盛られたお料理をかき回して自分の好物を探し出すこと。 |
| 迷い箸 | どのお料理から食べようかと迷って、料理の上であちこちとお箸を動かすこと。 |
| 探り箸 | 食器の中のお料理をかき混ぜて中身を探ること。 |
| 二人箸 | 一つの食器の上で、二人一緒に同じ料理をはさむこと。 |
| 寄せ箸 | 食器をお箸で手前に引き寄せること。 |
| 渡し箸 | 食事の途中なのにお箸を食器の上に渡しておくこと。当然、「ご馳走様」という意味になります。 |
| 指し箸 | お箸で人を指すこと。 |
| くわえ箸 | お箸を置かず、お箸から手を離して口にくわえたままにすること。 |
これだけすべてを注意しながら食事をするのは大変ですが、これも日本の伝統的な風習です。頭の片隅に入れておいてはいかがでしょうか。
当店のお箸は特殊な素材(象牙・銀・ガラス・チタン)を除けば、ほぼすべてが木製品です。漆器と同じように傷もつきますし、塗りがはげてしまうこともあります。長くお使いいただくには、食器洗い機では洗わないでください。食器洗い機で洗ってしまうと、傷むのが非常に早くなります。また、水へ長時間の漬けこみも避けてください。やわらかいスポンジで洗っていただければ十分きれいになります。少し手間がかかりますが、手洗いで最後に水気を拭き取っていただくのがお箸を長持ちさせます。
黒檀、紫檀など天然木のお箸の取り扱いについてですが、時間が経つとどうしても木の油分が抜けてしまい白くなってきてしまいます。白くなるのが気になる場合は、菜種油またはオリーブオイルを少量ティッシュなどに含ませていただき、お箸に刷り込んでいただければ元の色を取り戻します。この時に、ティッシュに茶色の汚れがつきますが、この汚れは木の樹液ですので決して有毒なものではありませんのでご安心ください。仕上げに乾拭きしていただきますと光沢が出ます。
| マラス | 別名ナンテンギリ、マスラなどと呼ばれ、イイギリ科の広葉樹です。耐久性に優れ、家具や建築材料にも使われます。ニューギニアから多く輸入されています。最近のお箸には一番多く使われている木材です。 |
|---|---|
| 黒檀(コクタン) | 黒檀には本黒檀、縞黒檀、青黒檀などがあり、本黒檀はインド・スリランカで採れる真っ黒な木のことをいい、いまではなかなか採れません。最近では、縞目のある縞黒檀が使われるようになりました。縞黒檀も縞目が美しく、非常に硬い木材で丈夫で磨くと非常に美しい木目が浮び上がります。黒檀の中で、最も高級なのが青黒檀です。青黒檀はきめの細かい木肌が非常にさわり心地が良く、程よいしなりがあるので、お箸にした場合にも非常に使いやすいお箸ができます。しかし、年々入手困難な材料になってきています。 |
| 紫檀(シタン) | ローズウッドとも呼ばれ、主にタイ、インド、ブラジルなどから輸入されています。黒檀より赤みのある明るい色で木目がとても美しく、硬く、加工も困難です。黒檀同様に、良質な紫檀も年々入手が難しくなってきています。 |
| たがや・鉄刀木・タガヤサン | タイ、インドなどから輸入されています。木肌は黒檀・紫檀に比べてやや粗いですが、磨くと美しい光沢が出ます。非常に硬い木材なので、加工は難しいですがとても丈夫です。なかには、木目の波模様がはっきりと出るものもあります。五角箸などで使われています。 |
| ホオノキ(朴) | 重さは軽く、削りやすく、狂いは少ない木材。漆器、下駄、家具など幅広い用途に使われています。日本各地に自生する落葉広葉樹です。 |
| ブナ | 世界遺産の白神山地のブナの原生林は有名。山の奥地に多く自生する落葉広葉樹。くるいやすい材質のため、しっかり乾燥させたものを使用しています。スキー板などにも使用されています。 |
| 桜 | 桜は色合いも明るく美しく素朴な木箸の中では女性にお勧めです。くるいも少ない材料です。桜の枝を妊婦が持つと安産祈願になるという言い伝えがあります。 |
| クワ | 黄白色な部分と黄褐色の部分がある木材で、お箸にした場合も、色のばらつきが見られます。くるいも少なく加工しやすい材料です。和家具、茶道具などにも使用されます。日本各地に自生する落葉広葉樹。 |
| クリ | タンニンを多く含むため、年月がたつと色が濃くなります。年輪がはっきりしているので拭き漆を塗ると木目がはっきりしてとてもきれいです。非常に硬い木材なので、加工するのがとても難しいです。 |
| あすなろ(翌檜) | 別名ヒバ、アテとも呼ばれます。「明日ひのきになろ」という言葉からあすなろと呼ばれるようになりました。軽く、加工もしやすい材料です。輪島塗箸でよく使われています。日本各地に自生する常緑針葉樹。 |
| 煤竹 | 古い日本家屋の囲炉裏の煤で長い間かけて燻された竹のことです。なんとも美しい飴色をしています。色の濃いものには、100年、200年という年月がかかっているものもあります。煤竹は、一般的な真竹、白竹より粘りがあり丈夫で、箸先にもしなりがあり使い心地が良いです。 |
| 黒柿 | 黒色の縞模様や濃淡がある柿木のことを言い、甘柿のこともあれば、渋柿の場合もあります。この独特な模様が出るためには、樹齢を重ねた木であると共に、土壌に含まれる金属や微生物の働きなどが必要となります。なかなか美しい模様の入った材料が無いため、希少な木材です。独特な黒柿の風合いをお楽しみください。 |
| 象牙 | 1989年以降ワシントン条約により、輸入が禁止されました。現在、日本国内流通のほとんどが条約以前に輸入されたものです。象牙の箸は、中国の皇帝も使っていたとされ、昔から高級品でした。象牙のお箸も高級ですが、一生お使いいただける逸品です。使っていくと黄ばんできますが、これも象牙の変化の特徴で、白くしたい場合は、食器やふきんの漂白剤を薄めてつけておけば白くなります。しかし、稀に漂白剤によって傷む場合もありますので、どうしても気になる場合のみにお勧めします。 |