津軽塗作家 須藤賢一氏 | 銀座夏野のスタッフブログ

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津軽塗作家 須藤賢一氏

お知らせ

2021.04.17

津軽塗作家、須藤賢一氏の生み出す漆器製品は、新しさに溢れている。名工・須藤八十八氏を父親に持つ彼は、伝統的な津軽塗の技を継承しながらも、 常に自由な発想で私たちを楽しませてくれるという筋金入りの作家である。

本当は白バイに乗りたかったという須藤さんだが、高校卒業後、津軽塗の工業試験場で津軽塗の基礎を勉強し、更に石川県輪島塗漆器技術研究所できゅう漆(漆を塗る技術。または下地付から上塗りまでの工程)、 蒔絵の勉強をする。

帰京後は専らコンペなどに出品をしていたが、ある時クラフトと出会い、その世界の自由さに魅かれる。自分の作ったものをみんなに使ってもらいたいと思い、クラフトの勉強を始めたという。

そんな須藤さんの作品は、シンプルな形の中に常に他と違ったアイディアが光っていて、持っているだけで毎日が楽しくなるような気になる。

「ただボーっとしていても絶対アイディアは浮かんでこないから、なるべくいろんなものを見るようにしている。東京に行ったら、美術館とかお店とか面白そうなところを見て歩く。何の目的もないけど、いっぱい見ている中で面白いものがあると、なんとなく自分の中に何かが残るから。そうするとものを作るときに、あれ面白かったな、とか思い出すから、そのアイディアを自分なりのものにしていくんだ。」

とにかく作っている時が一番楽しい、と須藤さんは言う。そんな須藤さんが、ものづくりをするときに大切にしているのが自然の素材のぬくもりだそうだ。

「東京で東急ハンズに行った時に、ただの板を買ってテーブルにする、と言うのを見て思ったの。今の人は自然のもの、天然の木の感触が欲しいんだなって。確かに津軽塗はヒバの木で作っているけど、全部塗ってしまってはプラスチックでも分からないでしょ。だから、底だけ塗らないものとかを作っている。手間はかかるけど、自然のぬくもりを一部残してどうデザインするかが面白い。」

ただ、彼の作品の面白さは木のぬくもりに頼ったものではなく、卓越した技術と日頃の努力に裏打ちされていることは間違いない。