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箸と日本人

  • 日本の料理と箸

    お知らせ

    2021.09.03


    “つくる”から、“食べる”まで


    畳に座し、右手に包丁、左手には自ら竹を削って作った真魚箸を持ち、客の目の前でまな板の上の魚を巧みにさばいていく。この儀式ともいうべき包丁さばきは、想像するに、きっと清らかで、美しい所作だったに違いありません。


    平安時代の貴族のあいだでは、来客の前で包丁さばきを披露することが教養のひとつとされていました。時代が下がり室町の世の頃には、包丁人や包丁者などと呼ばれる専門職も登場したそうです。
    こうした日本料理の伝統では、先に記した「真魚箸」がたいへん重要な役目を担ったように、箸は調理の道具のひとつとしてしても独自の進化を遂げてきました。


    調理箸としてわたしたちに馴染みが深いのは、やはり「菜箸」でしょう。そもそもは、それぞれの食材の香りをする香りが移るのを防ぐために、野菜に使う箸を菜箸として区別して使ったことがはじまりです。菜箸に使われる素材には、木や金属などがあり、サイズも用途によって大・中・小と長さがあり、一般的には大が揚げ物用、中が鍋物・煮炊き物用、小が盛り付け用となっています。聞くところによれば、最近はフランス料理のシェフたちの間でも、竹でつくられた細くて小さい盛り付け用の箸が重宝されているそうです。

    また、「取り箸」も日本ならではの箸のひとつといわれています。これはマナーと関係する話で、日本と同じく箸を使う中国では来客に自分の箸で料理を取り分ける「直箸」が、親愛の情を示すマナーとされています。

    対して日本では直箸は敬遠される傾向にあり、取り箸をつかって取り分けることがマナーのひとつとされています。

    高橋隆太(2014)おはしのおはなし(WAVE出版) p.44-p.45

  • 箸と手

    お知らせ

    2021.08.28

    正しい箸の持ち方は、手を美しく見せる

    炊きたてのごはんを海苔でくるりと包む。ふっくらと炊きあがったお豆をそっとつまむ。おろしたてのわさびを適量つまみ、醤油皿でとく。


    日本人が当たり前のようにこなすこうした箸使いは、やはり正しい箸を持ち(使い)方を習得していればこそ。「箸使いがちょっと苦手かも」という方は、これを機に、もう一度正しい箸を持ち(使い)方に挑戦してはみてはいかがでしょう。
    コツは、肩の力を抜いて「軽く持つ」ことです。


    (一)下側の一本の天が手から一センチ程度はみ出るようにし、薬指の爪の横と、親指と人差し指の股ではさみ込み、固定する。箸を使う際、この一本は固定したままで動かさない。


    (二)上側の一本は中指の爪の横にあて、親指と人差し指で軽くはさむように持つ。このとき上下の箸先が揃っていることが大切。また親指の先は人差し指の第一関節あたりで軽く固定されている感覚。


    (三)親指の先を支点にし、上側の一本だけ動かすようにして箸先の開閉を行う。親指を支点にし、人差し指で箸を軽く押さえる(人差し指・中指を軽く曲げる)ようにすると箸先は下がり、中指で箸を上げる(伸ばす)と箸先は上る。この繰り返しで箸先の開閉を行う。


    正しい箸の取り上げ方
    箸は膳の手前側に、箸先が左に向くように置きます。


    正しい箸の取り上げ方は、図の【一】から【四】の流れで、箸を戻すときは【四】から【一】と逆の手順になります。


    かしこまった席では、主人(目上)側が箸をとってから、もしくは「どうぞ」などの一言があってから、自分の箸をとるようにしましょう。

    高橋隆太(2014)おはしのおはなし(WAVE出版) p.50-p.52

  • 箸と日本人 

    お知らせ

    2021.08.06

    わたしたちの一生は「箸に始まり、箸に終わる」

    日本人の赤ちゃんは生まれてから百日後の「お食い初め」 (箸初め)で、初めて箸に触れます。人生の終わりには、この世で口にする最後の水、すなわち「死水」を箸で含ませられます。

    これらは「日本人の一生は箸に始まり、箸に終わる」と言われるゆえんでしょう。
    子どもたちが食べるものに一生苦労しないようにと願う「お食い初め」の儀式から始まるその“箸人生“。初節句、七五三、成人式と続く、人生の通過儀礼を祝う場では、「祝箸」と呼ばれる箸が供されます。祝い箸として使われるのは、柳の白木箸。春先に真っ先に芽吹く柳は昔から縁起の良い木とされ、白く清浄で強い木であることから邪気を払う霊木として扱われてきました。

    箸は生命の杖

    前途した「死水」のほかにも、火葬の際の「骨揚げ」という儀式では、竹と木が1本ずつで対になった箸を使い、つまんだ骨を「箸わたし」で送り、骨つぼに納めます。日常で異素材の箸を対にして使ったり、箸渡しを嫌うのはこのためです。また、死者の枕もとに供える「枕飯」 (一膳飯)には、「立て箸」「一本箸」など、「葬」にともなう箸があります。


    このように、箸は日本人の生誕から死まで付き添い、「晴れの日」にはその場にふさわしい箸が供され、「褻(ケ)の日」には木箸などふだん使いの箸が使われます。
    改めて日本人の一生と箸の関わり合いを見つめ直すと、箸をして「生命の杖」と言わせしめるものも納得できるのではないでしょうか。

    高橋隆太(2014)おはしのおはなし(WAVE出版) p.40-p.41

  • お箸の修理【木箸編】

    お知らせ

    2021.07.26

    銀座夏野では箸の修理を承っています。

    今回こちらでご紹介しているのは黒い色をした黒檀の木でできたお箸です。お客様から修理をご依頼いただいた時の状態はまるで白木のような白い状態でした。

    「これは何の木だろうなぁ」と思いながら、こちらを鉋(かんな)で一皮むいたら、黒い黒檀の木地が顔を出しました。削りながらどんどん黒くなってくるので楽しくなってしまいます。

    面白いのできちんと片方だけを削り、削る前と削った後で比べてみました。本当にびっくりしますが、木が生き返ったかのように見えます。こちらにはまだ、油も漆も塗っていません。削っただけでこんなにきれいになります。

    ぜひ箸の修理もご利用ください。

  • 〜漆の話〜

    箸と日本人

    2021.03.27

    その美しさと実用性の秘密日本人なら当たり前のように使っている漆が塗られた道具たち。箸はもちろん、器やお膳などの日本の食のシーンには欠かせない存在です。

    残念ながら漆器を日常的に使っているという家庭は少なくなってきたようですが、それでも1歩外に出れば、近所の蕎麦屋、居酒屋、和食屋で容易にお目にかかることができます。日本人にとってはさほど特別な存在ではない漆も、世界に目を向ければ、漆器のことを海外では「JAPAN」と呼ぶように、昔から昔日本が世界に誇ってきた特産品です。

    漆の木

    幾度も幾度も漆を塗り重ね、ものによっては1年がかりで仕上げるという漆の世界。鈍く光る漆器の曲線の縁を眺めていると、思わず吸い込まれそうになるほどの美しさを感じます。

    そんな漆と日本人との関係は、なんと縄文時代から。当時の遺跡から漆を塗った食器が数多く出土しています。ところで意外に思われるかもしれませんが、塗り箸が一般的に使われるようになったのは、わりと最近の話です。塗り箸が世の中に本格的に登場するようになったのは江戸時代になってからで、若狭小浜藩でつくられたのが始まりとされています。当時は大名武家の間で使われ、全国に普及したのは、明治に入り日清戦争後といわれています。

    〜抜きん出た耐久性を持つ塗料〜

    漆とは、漆科植物の漆の木から採った樹液です。漆の木は日本や中国、韓国、ベトナムなどアジア地域に自生しています。現在、日本で使用されている漆の多くは輸入に頼っています。

    植林の様子

    国産の漆は色に深みがあり、非常に品質が良いのですが、漆を採集する職人(漆掻き職人)が少なくなっていることもあり、大変貴重なものになっています。現在、国内で漆が採れる産地は、青森、岩手、秋田、石川、長野、岐阜、福井、新潟、茨城などです。漆の木は育てることが難しく、近年では植林もされていますが、漆を採集できるようになるまでは、早くて10年以上もの歳月を要します。
    さらには、1本の漆の器から取れる漆の量はわずか200グラムほど。そんな貴重な国産漆が高価なものになってしまうのは、しかたがないのかもしれません。

    漆掻き職人の技

    漆のすごさは「美」だけにあるわけではありません。実用面でも大変優れた特性を持ちあわせています。漆は、室内や地中など紫外線が当たらない環境では、4〜5000年もつとさえいわれています。酸性にもアルカリ性にも強いうえ、高温、低温にも耐えられます。耐久性においては、現在開発されるどの人工塗料よりも優れているといえるでしょう。漆の強さの秘密は、乾くというよりも固まるというその性質にあります。
    空気中の酸素により、主成分であるウルシオールが酸化することによって、液体から固体に変化し硬化するからです。

    生漆

    〜全国の産地、さまざまな技法〜

    漆の塗箸は、塗っては研ぎを何度も繰り返し、漆が塗り重ねられています。代表的なものは、輪島塗と若狭塗で、そのほか津軽塗、会津塗、川連塗、越前漆器、新潟漆器、浄法寺塗、村上堆朱塗、木曽塗、飛騨春慶塗などがありますが、青貝がはめこまれているもの、繊細な蒔絵が施されているものなど、見る者の目を存分に楽しませてくれます。漆塗というと黒、朱、溜色がポピュラーな色ですが、 朱色ひとつとっても、手がける職人によって微妙な違いがあり、それもまた漆の奥深い魅力のひとつです。

    #銀座夏野 #漆 #お箸 #伝統工芸品 #美しいお箸

  • 箸の歴史

    箸と日本人

    2021.03.12

    〜箸と人はいつどのようにして出会ったのか〜
    人が箸を使うようになったのはいつからなのか。
    箸の起源は諸説あり、これといった定説は無いようです。よくよく考えてみると、箸のようなシンプルな道具はいずれも、その始まりを明確に導き出す事は困難でしょう。匙しかり、碗しかり。それでもあえて箸の歴史を紐解けば、人が火を使い始め、食生活が発展し、熱いものを食すようになり、手で食べることが困難になったことで、木の枝を使って食事をするようになったのでは、という説があります。


    日本では『魏志倭人伝』に日本人が手食であった旨の記述があることから、弥生時代まではまだ箸は使われていなかったと推察されています。
    古墳時代に入ると、その当時の遺跡からは木を曲げて作ったピンセットのような形状をした、「折箸」なるものが発見されています。
     ただし、この折箸は、食事用と言うよりかは取り箸、祭祀用に使われていた箸なのではないかと言われています。
    ちなみに歴史上、日本古来の箸といわれているのは、奈良の正倉院に現存している箸で、七世紀頃のものとされており、その形は先の折箸です。