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職人インタビュー

  • 木曽塗職人 小林登氏

    お知らせ

    2021.09.04

    良いお箸の需要が高まっている今、安全で丈夫なお箸を作ってもらえるような職人が必要とされている。木曽の小林さんは、そんな数少ない職人の一人だ。

    「私も小さな時からお箸を使っていたけど、どういうお箸を使ってきたか覚えていないんですよね。どういう箸がいい箸か、っていうのは実際に商売を始めてから意識するようになりました。初めは、家族に漆だけを塗った箸を使ってもらいたくて作ったのがきっかけなんです。箸職人として技術を覚えたわけじゃなくて、話を聞いたりして自分で工夫して作ってきたんです。」


    小林さんの使う木地は桧とあすなろ(ヒバ)の二種類だ。天然の漆だけを塗った安全なお箸、という小林さんの桧の箸は今、木曽郡下の七つの小中学校で使われている。


    「子供さんはとにかくお箸を噛むんですよね。でもウレタンで着色しているものは、木地に色が染み込んで中まで赤いんですよ。そういうのが嫌で、下塗りから全部漆だけで作りたかったんです。だから能率は上がらないし、材料費もかかってしまう。でも、箸は食材と一緒に口の中に入るものの割にないがしろにされてきたでしょ。お箸の安全性にこだわる人が増えているというのは嬉しい話ですね。」


    今は石目塗り(黒色の乾漆粉などを蒔いて石目肌をみせる塗物のこと。やや厚めの下塗りの後、乾漆粉を蒔き、生漆で固めて研ぎ上げる。小林さんは乾漆粉ではなく炭粉を使っている)を施して、箸先を丈夫にすることを心掛けていると語る。安全性と丈夫さにかけでは、自信をもって薦められるお箸がここにある。

    小林さんの作ったお箸。

    丈夫で安全というだけではなく、模様の美しさも魅力の一つだ。

    高橋隆太(2003)究極のお箸(株式会社三省堂出版) p.34-p.35

  • 若狭塗職人 羽田要一郎氏

    お知らせ

    2021.08.09

    伝統工芸士・羽田要一郎氏の塗り箸は、漆の色の深みといい、模様の出具合といい、溜息が出るほど美しく上品だ。

    若狭塗は、慶長年間(1596年から1614年)に小浜藩の松浦三十郎が中国の漆塗盆を模して作ったのが始まりと言われる。その弟子が海辺の貝殻と白砂の美しい若狭の景色を模様した磯草塗りを考案し、後年、卵殻金箔押しの技術が完成。寛永11年に小浜藩主となった酒井忠勝が「若狭塗」と命名し、保護蒋励したため漆塗業が盛んとなる。また時を同じくして、箸先が鶴のくちばしのように細い「若狭塗箸」を縁起の良い長命長寿の箸と称し、日本一のお箸の産地としての基礎を築いた。

    創業300年の老舗、羽田漆器店の13代目当主である羽田氏が心掛けていることは、
    「とにかく伝統通りにやること。基本通りにやる。これが間違いない。」漆塗表記があるからといって漆が必ずしも使われているとは限らないご時世だが、羽田さんは誤魔化すことなく本漆を使う。ここに伝統通りにやるという羽田さんの姿勢が現れているのだろう。

    伝統工芸士・羽田要一郎氏

    「伝統工芸に指定されているんで、かえっていい加減なことはできんのですわ。手を縛られてるようなもんで。ははは。これでいい加減にやってたら困りますしな。」

    若狭塗業界で最年長になったという羽田氏だが、非常に明快な語り口でとても昭和4年生まれの75歳とは思えない。まだまだ現役に見えるが、気掛かりな後継ぎに関しても心配はないようだ。


    「もう息子が一人前にできて、自分で考えて色々とやっています。息子のは少し柄が変わってるね。もう、ホントに若い人に頑張ってもらわんと。」

    高橋隆太(2003)究極のお箸(株式会社三省堂出版) p.120-p.121

  • 箸職人 山田正義氏

    お知らせ

    2021.08.03

    180万膳のストーリー

    箸はどのようにして生まれるのか

    木箸職人・山田正義さんの仕事場に通うようになってから早十数年。今でも「銀座夏野」に新しいスタッフが変わるとそのスタッフを引き連れ、研修を兼ねつつ、山田さんのもとを訪れています。

    一膳の箸がどのようにして生まれるのか。

    一流の職人がどのようにして箸づくりと向き合っているのか。山田さんの工場を訪うことは、木箸作りの伝統を今日に受け継ぐ仕事ぶりに、間近で接することのできるまたとない機会を得るということです。今回は本書の取材ということもあり、山田さんに無理を言って箸作りの一連の流れを、一足飛びで見せていただくことにしました。
    いつ訪れても、 箸一膳が完成するまでにこれだけの“手”がかかっているのか、と感心させることしきりです。

    箸職人、ひと筋五十年

    ではまず、簡単に山田さんの紹介から。先代までは東京に工房を構え、山田さんの代になってから埼玉県児玉郡美里町で、現在の「山田箸製作所」を開かれました。

    「父親も母親も箸の職人でしたが、父親は何も教えてくれませんでしたね。まぁ、いわゆる“見て覚えろ“という昔気質の人でした」と話してくださった山田さんは、1944年の生まれで現在は70歳。この道50年と言う箸一筋の職人です。

    「若いころなら一日1,500膳ぐらいつくれていたけど、今は昔と違って工程も増えだから、昔の3分の2もいかないかなぁ。まぁ平均すると、年々35,000~36,000膳というところでしょうか。」

    山田さんはこんなふうに、こともなげに語ってはいたものの、少なく見積もっても36,000膳×50年で、これまでにざっと180万膳を手がけてきた計算になります。
    腕の良い職人は仕事が速いー。
    これからこれは今も昔も変わらないと思います。
    山田さんの仕事をはたで見ていると、その動きは実に小気味よく、リズミカルです。
    そして作業が興に乗ってくると、無駄な動きが一切なくなり、そのスピードはいったいどこまで速くなるんだろう、と感じてしまうなるほどです。

    丸太を挽くことから始まる

    山田さんの箸作りの特徴の一つは「丸太から始まる」こと。

    普通は「大割り」と呼ばれる板状に製材されたものだったり、あらかた箸の形状になっている「小割り」と呼ばれる材料だったりから箸作りを行うことが多いようです。簡単に言うと、仕上げだけ行う箸職人が多いということです。


    ところが山田さんは、丸太を挽いてまずはブロック状にし、さらにそこからブロックを挽いて板(大割り)にしていきます。
    丸太から始め、大割りを作るところからこなす職人は、全国的にみても数少ない存在です。

    「前に飛びますから気をつけてください」
    と言って山田さんが挽きはじめたのは「青黒檀」という極上の材料。
    実は箸の世界では最近、「いい“アオコク“がなかなか手にはいらない」と言われるほどの、特別な木です。
    ただし、厳密には「小割りになった“いいアオコク“がない」だけで、山田さんのように丸太から仕入れ、木目などを見ながら箸に適した材に挽く技術があれば、みごとに青黒檀の箸を作れるのです。

    木の中の、水の流れを読む

    次に山田さんが挽きはじめたのは「斧折樺(オノオレカンバ)」という木。「小割り」の作業の開始です。
    傍目には次から次へ、淡々と材を挽いているようにしか見えません。けれども山田さんは、時折材の向きを変えたりしながら、“何か“を素早く判断しつつ挽いていました。

    山田さんの手が止まった時を見計らって、わたしは「木目ですか?」と尋ねました。

    「ですね。後は道管です」と山田さんは答えました。
    道管とは、正確には「被子植物の維菅束の木部を構成する組織」のことですが、平たく言うと、根から吸収した水や養分を上部に送るための管のことです。

    挽いた材を見ると、木目とは別に線が走っています。この道管が将来的に、箸の「折れる・折れない」「反る・反らない」へとつながります。

    「こっちへこう木目が走っているでしょ。で、道管はこっちへこう走っている。こっから先が細くなっていて、ここから先は太くなっていてーー」
    と、山田さんはこの材をどう挽くべきなのかを、丁寧に説明してくれました。 私たちは一つひとつの線をじっくり目で追いながら、ふむふむと聞いていたけれど、山田さんは毎分3,500回転もする刃と数ミリの距離で対峙し、木目にも、道管にも、瞬時のうちに目を配り、滞ることなく、木を刃に送り込んでいるのです。


    山田さんがこの世界に入ったのは16歳の時。
     製材を始めたのは20歳を過ぎてからだそうです。
    山田さんは作業を続けながら、淡々とこうおっしゃいました。
    「木は全部、違いますから」

    手仕事らしい、温かみのあるフォルム


    「大割り」「小割り」の次はサンドペーパーで「削り」の作業が始まります。
    この工程は箸をつくる作業で、グラインダーという機械を使い一本ずつ削りながら成型します。

     持ち手の形状は四角形(胴張)、五角形、六角形とさまざま。繊細な箸先も含めて、山田さんは何角形だろうと、どんな形状だろうと、培った感覚を頼りに形をつくりあげていきます。

    削り終わった箸を手にとると、手仕事らしい、温かみのあるフォルムを感じ取ることができます。次に、「ガラ掛け」と呼ばれる、箸の表面を全体的に滑らかにするための工程に入ります。これは基本的に塗りの仕上げなどを行わない木箸作りの、大きな特徴のひとつです。

    簡単な機械を使って水と砂で研磨していくものですが、この「ガラ掛け」のおかげで、表面は気持ちいいほどつるつるに仕上がります。

    太陽の力も借りて

    「ガラ掛け」が終わると天日干しを行います。工場の屋根が箸を干す場所になっていて、屋根一面に6,000膳もの箸がずらりと並びます。
    この天日干しは「乾かす」ことが目的というより、「選別」が主たる目的のようです。


    山田さん曰く「この段階で曲が出ている箸は、すべてはじきます。
    特に天気の良い、カンカン照りの日なんかは、曲がりが出る箸はすごく曲がる。そんな箸は商品になりませんから」とのこと。


     大量生産のまるで工業製品のごとき箸は、機械で一気に強制的に乾かすその一方で、山田さんはお日さまの力を借り、時間をかけて乾かし、素材としての良し悪しを自分の目で一つひとつ確認する。
    木を挽いているとき、「木を見る」ことがある種、職人の大切な仕事のひとつでしたが、天日干しにおいても「木を見る」ことはとても大事な行為となるんです。
    山田さんの木と向き合う姿勢は、いつも、本当に誠実です。

    木そのもので、勝負する

    最後の仕上げは「バフ掛け」です。漆上げの場合また別の工程が控えていますが、この日は昔ながらの木箸らしい生地の箸を手がけていたので、天然由来のカルナバワックスを使って磨き上げていきました。


    木箸の特徴は何といっても、塗りなどの“加飾“をせず、木地そのもので勝負することです。だからこそ、木そのものが重要ですし、フォルムや手触りはごまかしがききません。ある意味、つくり手の技量と志がストレートに表れる箸だと思っています。木片は物語る工場の裏には、残念ながら箸になれなかった木片が、寒い日のストーブの薪としてうず高く積まれています。なかには銘木と呼ばれるような木片すら、無造作に転がっています。


    その木片の山を見るにつけ、今手にしている箸のありがたみをひしひしと感じます。
    180万分の一膳ですらおろそかにしない、山田さんの木箸職人としての気高き姿勢は、箸足り得なかったそれらの木片たちが、 密かに物語っているような気がします。

  • 津軽塗作家 須藤賢一氏

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    2021.04.17

    津軽塗作家、須藤賢一氏の生み出す漆器製品は、新しさに溢れている。名工・須藤八十八氏を父親に持つ彼は、伝統的な津軽塗の技を継承しながらも、 常に自由な発想で私たちを楽しませてくれるという筋金入りの作家である。

    本当は白バイに乗りたかったという須藤さんだが、高校卒業後、津軽塗の工業試験場で津軽塗の基礎を勉強し、更に石川県輪島塗漆器技術研究所できゅう漆(漆を塗る技術。または下地付から上塗りまでの工程)、 蒔絵の勉強をする。

    帰京後は専らコンペなどに出品をしていたが、ある時クラフトと出会い、その世界の自由さに魅かれる。自分の作ったものをみんなに使ってもらいたいと思い、クラフトの勉強を始めたという。

    そんな須藤さんの作品は、シンプルな形の中に常に他と違ったアイディアが光っていて、持っているだけで毎日が楽しくなるような気になる。

    「ただボーっとしていても絶対アイディアは浮かんでこないから、なるべくいろんなものを見るようにしている。東京に行ったら、美術館とかお店とか面白そうなところを見て歩く。何の目的もないけど、いっぱい見ている中で面白いものがあると、なんとなく自分の中に何かが残るから。そうするとものを作るときに、あれ面白かったな、とか思い出すから、そのアイディアを自分なりのものにしていくんだ。」

    とにかく作っている時が一番楽しい、と須藤さんは言う。そんな須藤さんが、ものづくりをするときに大切にしているのが自然の素材のぬくもりだそうだ。

    「東京で東急ハンズに行った時に、ただの板を買ってテーブルにする、と言うのを見て思ったの。今の人は自然のもの、天然の木の感触が欲しいんだなって。確かに津軽塗はヒバの木で作っているけど、全部塗ってしまってはプラスチックでも分からないでしょ。だから、底だけ塗らないものとかを作っている。手間はかかるけど、自然のぬくもりを一部残してどうデザインするかが面白い。」

    ただ、彼の作品の面白さは木のぬくもりに頼ったものではなく、卓越した技術と日頃の努力に裏打ちされていることは間違いない。

  • 箸職人 阿部敬氏

    お知らせ

    2021.04.10

    川連塗師・阿部敬氏のお箸は、サラサラしているのにしっとりと気持ち良く手に馴染む。不思議なお箸だ。つい触感を楽しんでしまう。

    阿部さんが箸専門なってから十五年ぐらい経つ。川連塗の歴史の中で箸専門の塗師は初めて。阿部さんも元はお椀の塗りや販売をしていたが、ある時塗りの研究会でお箸を勧められて、はまってしまったそうだ。

    「お箸はたった二本の棒なんだけど、塗りの縮図みたいなところがあるんですよ。塗りのパターンはテーブルを塗るのもお箸を塗るのも同じだから、お箸を塗っていれば何でもできるぞ、みたいな。お箸の形は変えようがないから、その制約の中で変化をつけるとしたら塗りで勝負するしかないでしょ。だからやってて面白いんですよ。経験から予測してお箸を塗るでしょう。ところが、予想が外れることがある。大方予想が外れてダメになるんだけど、たまにいい結果が出ることがあるのよ。それが面白い。発見があるんです。で、だんだん入り込んでいっちゃった。)

    漆の場合、一番外側に何を塗っているかを表示すれば良いので、漆だけ使っているか、ウレタンを混ぜているかは表示を見てもわからない。残念なことに漆製品の一部は、成分の大半がウレタン樹脂などで占められていて漆は数パーセントしか使われていない。阿部さんはそういう状況を逆手にとり、最初から最後まで天然の漆だけを使ってお箸を作る、ということを武器にして仕事をする。

    「とにかくお箸って毎日毎日使うし、口に入る。なのに、ほとんどウレタンみたいな樹脂塗料を使っている。でも箸先って減ってきて、必ず木地が出てくるでしょ。その分を食べてるってことでしょ。だったら、安全な自然の漆を使ってね、最初っから最後まできちんと漆を使ったお箸を、多少高くても作っていけば何とかなるかな、と思って。他と同じことをやってもダメだから、逆にやってもいないようなものをやったらいいかな、て思っちゃったんです。」

    天然の木を使って天然の漆で、安全なお箸を作る。最近は安全性ということに関して、自分の仕事に自信を深めている。

    「箸作りを始めた頃は環境ホルモンなんて出てこなかった頃なんだけども、その後そういう話が出てきて、あぁ、間違いなかったのかな、って。」最も気にかけているのは箸先のもちだという。一番擦れる部分だし、噛む人もいる。

    「買って何回か使うとすぐ木地が見えてくるようでは困るでしょ?お客さんがいくらかでもお金を出して買ってくれているんだから、それ以上のものを作り手としては提供していきたいなと思うじゃないですか。あぁ、良いお箸を買ったと思ってもらったらありがたいですもん。」

    阿部さんは職人である。正直にも良いものを作っていれば、必ず認めてもらえる。そう信じて目先の損得に捕らわれず常に新しいものを、人のやっていないことを発見しながら箸を作っている。だからこそ、私たちが阿部さんの作るお箸に魅かれるのだろう。すべて天然の漆を使っていると知らなくてもそのお箸が充分魅力的なのは、そういう仕事に対する気持ちがこもっているからなのかもしれない。

    高橋隆太(2003)究極のお箸 42-45 

  • 箸職人 竹田勝彦氏

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    2021.04.02

    お箸の本当の魅力は実際に手に持ってみないとわからない。東京・向島にある大黒屋のお箸は、一度手にするとお箸に対する考え方が変わってしまうほどの魅力にみちている。

    箸職人 竹田勝彦氏


    創作江戸木箸「大黒屋」のご主人竹田勝彦氏が箸作りを始めたのは約十五年前。もとは箸職人ではなくお箸に関する商売をしていたのだが、お箸のことを理解するには自分たちで作らなくては、と思ったのがお箸作りのきっかけだという。


    初めはサンプルを作って職人さんに頼んでみたが、丸かったり細かったり変則的な形ばかり頼んでいたため、なかなか思うように上がってこなかった。ならば自分の手で作ろう、と大黒屋を始めたのだ。

    「もともとものを作るのは好きでね、実は祖父は大工で、父はげた職人なんです。代々、木でものを作ることをやってた。大黒屋っていうのも屋号なんです。」

    大黒屋のお箸には様々な形がある。五角、八角、丸、四角、木彫り風、太いもの、細いもの。そして素材も、青黒檀、黒檀、紫檀、たがやなど様々だ。どれも持ちやすい上に、箸先が細くて惚れ惚れするほど美しい。

    「うちはあくまで創作だから、考えながら面白くて使いやすいお箸を作っているんです。お箸を木を削るところから作っていかなきゃいけない。お箸はバランスが一番大切で、いかに滑らかに細くしていくかが命だから、全て手作りじゃないとできないんです。でもね、そうやって使いやすさを追求していったら、バランスの良い、美しいお箸になっていったんですよ。機能性がデザインになったわけです。」

    とにかく使いやすさを、と主張するだけあって、いくつかのお箸を持ってみるとどれも持ち心地が違い、いくつか試すうちに今まで味わったことのないほど手に馴染むお箸が見つかるのでです。

    「手の大きさだけじゃなくてね、手の肉の厚さや指の長さ何かが、全員違うんだから、みんな自分の手に合うお箸っていうのは違うんです。
     だから、家にあった箸を使って欲しい。だって、みんな靴を履いてみて自分に合った靴を買うでしょう?それと一緒よ、手に持ってみて自分に合うと思ったものを使ってほしいし、私たちはお客さんが気に入って、また使いたいと思うものを作らないといけない。」

    そんな大黒屋さんの気持ちが伝わってか、最近は大黒屋さんのお箸に惚れ込む人が多くなり話題になっている。人気のお箸の種類は、普通の食事用は食食事場所はもちろん、納豆箸、豆腐箸、短いずんぐり箸など多岐にわたる。「求めている人がいるわけだから、喜んでもらえるお箸を作るということに職人は夢をかけて作っていくわけですよ。作り手が手間ひまかけて、魂を入れてものを作っているから、そういう商品は必ずお客様にも伝わるんです。」

    大黒屋のお箸が、夏野の商品の中でも多少値が張っているにもかかわらず、常に売れ続けている理由はここにあるのだろう。職人がお箸に込めた思いは、確実に買う側にも伝わっているのだ。大切に使いたいお箸、そしてダメになってもまた欲しいと思えるお箸、大黒屋のお箸はまさにそんなお箸である。