みかわ是山居・早乙女哲哉さんを訪ねて|天ぷら職人が考える「菜箸」という道具 | 箸ブログ

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みかわ是山居・早乙女哲哉さんを訪ねて|天ぷら職人が考える「菜箸」という道具

お知らせ

2026.09.26

天ぷらを揚げる料理人にとって、菜箸は毎日の仕事を支える大切な道具です。

銀座夏野では以前より、東京・門前仲町「みかわ是山居」の早乙女哲哉さんのために、天ぷら用の菜箸を特注で製作してきました。

今回、その菜箸を実際に使い続けてきた早乙女さんから、さらに使いやすい道具にするためのご意見を伺う機会をいただきました。

そこで聞くことができたのは、菜箸の形についてだけではありません。

料理人にとって「道具」とは何なのか。

長年、天ぷらと向き合い続けてきた早乙女さんならではのお話を伺いました。

長年使う中で生まれた、さらなる改良

早乙女さんが使っているのは、銀座夏野が特注で製作した天ぷら用の菜箸です。

一度の営業で数多くの天ぷらを揚げる早乙女さんにとって、菜箸はまさに仕事を支える道具。

食材を油へ入れる。
位置を調整する。
状態を見極める。
そして、油から引き上げる。

その一連の所作を繰り返す中で、早乙女さんは菜箸をご自身の手でさらに削り、使いやすい形へと調整されていました。

今回、その実際の菜箸を見せていただきながら、どこを、なぜ変えているのかを直接伺いました。

みかわ是山居 早乙女哲哉さんと銀座夏野

「力を入れるほど、食材が逃げてしまう」

早乙女さんが指摘されたのは、箸先の形状です。

先端に向かって細くなる形状では、天ぷらをしっかり掴もうと力を加えた際に、食材が前方へ滑り出してしまうことがあるといいます。

ゆっくりと扱うのであれば、大きな問題にはならないかもしれません。

しかし早乙女さんの仕事では、短い時間の中で数多くの天ぷらを扱います。

ほんのわずかな滑りや引っ掛かりであっても、それが何度も繰り返されれば、料理人の所作を妨げることになります。

そこで早乙女さんは、銀座夏野が特注で製作した菜箸を、長年使い続ける中でさらにご自身の仕事に合わせて削り直し、より使いやすい形へと仕立てていました。

使いながら、道具を仕立てる

実際に見せていただいた菜箸には、長年使い込まれた跡が残っています。

そして新品の菜箸と並べてみると、その形状には明確な違いがありました。

食材を掴んだときに逃げにくく、それでいて繊細な操作を妨げない。

早乙女さんは、使っていく中で形が変われば再び削り、仕事に適した状態を保ちながら使い続けています。

そこにあったのは、完成した製品をそのまま使うという考え方ではありません。

自分の仕事に合わせて、道具そのものを育てていく。

料理人と道具の非常に深い関係を見ることができました。

銀座夏野が特注製作した天ぷら用菜箸と早乙女哲哉さんが削り調整した菜箸

道具とは「自分の力を発揮する」ためのもの

今回のお話で、特に印象に残った言葉があります。

「自分の力を、何の憂いもなく発揮できる。それが道具。」
― みかわ是山居 早乙女哲哉さん

道具に引っ掛かりがあれば、人の動きもそこで止まります。

料理人が道具に合わせるのではなく、道具が料理人の仕事を邪魔しないこと。

早乙女さんは、天ぷらを揚げる際の身体の動きにも、一つひとつ意味があると話します。

大きく動いている手だけではなく、その動きを支えているもう一方の手のわずかな動きにも意味がある。

菜箸もまた、その一連の所作の中で、身体の延長のように自然に動かなければならないのだと感じました。

早乙女哲哉さんが使用する天ぷら用の器

道具は、美しいだけでは完成しない

話は菜箸から、器や日本の工芸文化へと広がっていきました。

早乙女さんが大切にしているのは、単に美しいものを作ることではありません。

料理をどうすれば、より美味しく食べられるのか。

その目的に対して形があり、使い勝手があり、そこに美しさがある。

用途と使い勝手、そして造形の美しさ。

それらが一つのものとして成立することが、道具には求められるというお話でした。

日本には、料理、季節、使う人に応じて、実に多様な器や道具が生まれてきました。

一口の料理を、もっと美味しく食べたい。

そのために形を考え、素材を選び、使い手と作り手が工夫を重ねてきた。

早乙女さんのお話を伺うと、日本の食文化と道具文化がいかに深く結びついているかが見えてきます。

早乙女さんの手から、銀座夏野の工房へ

今回、早乙女さんからいただいたご意見と、実際にご自身で削り直した菜箸を参考に、銀座夏野では現在、自社工房で新たな試作を進めています。

形状や仕上げ方を変えた複数の試作品を製作し、それぞれの使い心地を比較できるようにしています。

完成後は再び早乙女さんに実際に使っていただき、その感触を伺う予定です。

そこでまた意見をいただき、必要であれば職人が手を入れる。

使い手から作り手へ。
そして、作り手から再び使い手へ。

その往復を重ねながら、一本の菜箸をさらに磨き上げていきます。

料理人と箸職人の間に立つ

銀座夏野には、全国各地の職人が作る箸があります。

しかし、箸を「販売する」ことだけが私たちの仕事ではないと考えています。

毎日道具を使う人だからこそ分かる感覚があります。

そして、その感覚を形にできる職人の技術があります。

使う人の声を聞き、作る人へ伝える。
職人が形にしたものを、もう一度使っていただく。

その間をつなぐことも、箸専門店としての大切な役割です。

今回の菜箸も、まだ完成ではありません。

早乙女さんが長年使い込んできた一本と、そこからいただいた言葉を手掛かりに、銀座夏野の職人が新たな形を探っています。

料理人の所作を邪魔せず、その力を自然に引き出す菜箸とは何か。

完成までの過程も、これからご紹介していきます。

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